プロ野球を見ていると、私たち視聴者はほとんど意識することがない「規定打席」ですが、実は首位打者といった打撃タイトルや選手たちの年俸に大きな影響を及ぼす大事な指標です。
今回はこのプロ野球で定義されている「規定打席」の意味と、その計算方法を解説していきます。
規定打席の意味とは?計算の方法
規定打席とは、試合数に3.1倍して算出される打席数のことで、年間を通じバッターとして試合に出続けたかどうかを示します。
この「規定打席」以上立ったかどうかで、打率や出塁率といった打者ランキングに乗るか決まったり、選手たちの年俸に大きく影響したりするんですね。
計算方法は冒頭でも言ったように、試合数に3.1をかけることで計算され、小数点以下は四捨五入します。
たとえば、2020年はコロナウイルスの影響で試合数が120試合に縮小されているため、
規定打席=120試合×3.1打席=372打席
ということになります。
つまり、全試合終了後、372打席以上立ったバッターは、年間を通じてチームに貢献したということになり、打率や出塁率の打撃ランキングにも掲載されるわけですね。
ちなみに二軍では、かけられる「3.1」が「2.7」に変換されるので、一軍の試合よりかは規定打席は少なくなります。二軍はあくまで一軍選手の調整であったり、若手を育成したりする組織であるため、規定打席は少なく調整されているわけですね。
「首位打者」と「最高出塁率」のタイトルは規定打席以上立つともらえる権利がある
リーグの中で最も打率の高かった人に贈られる「首位打者」と、最も出塁率の高かった「最高出塁率」は、規定打席以上立つと受け取れる打撃タイトルです。
もし、この規定打席を設けていないと、一打席でヒットを一本を打った10割バッターの人にこの首位打者タイトルを贈ることになりますからね。
これだとかなり不公平なので、しっかりと規定打席以上立った人だけに贈られるのが「首位打者」と「最高出塁率」なわけです。
しかし、例外として規定打席に満たしていない人でも、規定打席まで全て凡打と計算した時の打率と出塁率が、規定打席に乗っている打者のトップよりも高い場合、その人に首位打者や最高出塁率が贈られる時があります。
最近だと、2016年に二刀流の大谷翔平選手がこの例外によって「首位打者」を獲れるくらいまでの位置にいたことから、今後この例外が適用されてタイトルを獲る人が現れるかもしれませんね。
規定打席に乗せれば選手の年俸の査定にプラスになる
規定打席以上立ったということは、年間を通じて試合に出たという証なので、年終わりの契約更改の際の年俸の査定にプラス材料として入ります。
リーグで優勝が決まったり、クライマックスシリーズ出場の権利が決まったりしたとしても、規定打席にギリギリ乗っていない選手たちは、その打席数まで必死に立とうとします。
監督やコーチもこの事情を知っているので、規定打席より遥かに立っている人は途中で休ませ、規定打席未満の人たちを積極的に起用するわけですね。
「規定打席」で勘違いしやすいこと!
「規定打席」とは一口に言っても、理解するうえで2つ注意点がありますので、このあたりは知っておくとさらにプロ野球を楽しめるかと思います。
「打席数」と「打数」を混同しない
これは結構ある間違いで、たとえば、読売ジャイアンツに所属の坂本選手が「打率.333(360‐120)」という表記があれば、そのまま360打席と読んでいませんか?
実はこれ、間違った読み方なんですね。
そもそも打席数とは、打者が打席に立った数のことで、安打や凡打、犠打、四死球と打席のなかでどんな結果が生まれても打席数は加算されます。
一方の打数は、打席数から、犠打や四死球といった凡打とはカウントされない打席の数を引いた指標のことです。
たとえば、あるA選手が200打席立ち、犠打を5回、四死球が15個あったとすると、
打数=200-5-15=180打数
ということになります。
では冒頭でお話しした坂本選手の「打率.333(360‐120)」の話に戻すと、この打数は打率の計算の時に使われるため、360というのは360打数と読みます。
つまり、打席の数ではないため、この打率に表示された360からは規定打席を読み取ることはできません。
テレビ中継のほとんどでは「打率」「ホームラン数」「打点」の3つが書かれていて、打席数は表示されませんからね。
ですので、たとえば、もし坂本選手が規定打席に乗っているかを調べたいなら、「日本プロ野球機構」の公式サイトより、選手検索をすれば調べることができます。
色々な選手を調べることができるので、自分の好きな選手が規定打席に乗っているか調べてみてくださいね。
ホームラン数や打点は規定打席とは関係なくランキングに乗る
ホームラン数や打点、安打数は、規定打席以上立たずともランキングに乗ります。
これらの指標は全て打った分だけ増えていく指標で、打率と出塁率のように変動がありません。
そのため、規定打席以上立たずともホームラン王や打点王のタイトルを獲得することができます。
ここ最近だと、2012年に当時ヤクルトスワローズ所属のバレンティン選手が、規定打席未到達ながら、ホームラン31本を放ち、ホームラン王のタイトルを獲得しています。
まとめ
あまり意識することがなかったかもしれない「規定打席」。計算自体は、試合数に3.1倍かけるかなり単純な算出方法ですが、選手たちは打撃タイトルだったり、年俸の査定だったりと、この規定打席を満たすよう必死にプレーしています。
さらに、2020年は試合数が23試合も減って120試合となったことから、規定打席もその分減り、夢の打率4割バッターが誕生か?と言われています。
これからはぜひ「規定打席」にも注目して、野球観戦を楽しみましょう♪
他にも、「2020年の外国人枠への特別ルール」についてなど、色々な記事を投稿していますので、ぜひ参考にして頂いて、よりプロ野球を面白く感じて欲しいと思います。